◆◇HSP(ヒートショックプロテイン)とは?◇◆

人体は加温されると「熱ショックタンパク質(HSP)」が産生され、これがさまざまな病気やストレス傷害から体を守り、がんの予防をするということが分ってきました。
熱ショックタンパク質(Heat Shock Protein、頭文字をとって「HSP」と呼ばれる)は、文字通り熱というストレスによってつくられるタンパク質です。
感染・傷害・疲労などで傷ついた細胞を修復し、生体をストレスから防御してくれます。
最近、HSPが、がんや病原菌を見つけだして殺傷するNK(ナチュラルキラー)細胞の活性を高めたり、抗原提示によりがん細胞を免疫細胞が攻撃しやすくする事がわかってきました。
体を加温する「温熱療法」というと、主にがんの治療方法として知られていますが、がんだけではなく、正常細胞を加温してHSPを増加させ免疫力を高めると、様々なストレスに対して細胞は強くなり、正常細胞や弱々しい細胞を元気にすることができます。

  1. 人間は日々精神的・物理的・化学的ストレスを受け、その結果、細胞の中にあるタンパク質が傷害をうけ、これが様々な病気やストレス傷害の原因となっています。
  2. ところが、このようなストレスを受けたとき、免疫や止血の仕組みと同じような体を守る仕組みがあることがわかったのです。それが、細胞はストレスで傷害をうけたタンパク質を、みずからHSP(ヒート・ショック・プロテイン)をつくって、傷害をうけた細胞を修復しているというシステムなのです。

 

遠赤サウナが熱ショックタンパク質を一番増やす

  • 熱ショックタンパク質(HSP)は細胞に危機が迫ると異常なタンパクができないように細胞内で大量につくられます。
  • また、異常になった細胞を修理し、もとの元気な細胞に戻す。
  • 体を温めると細胞を元気にする熱ショックタンパク質が増える。
  • 熱ショックタンパク質が増えると同時に自然免疫能(TNF‐α、INF)が高まる。
  • そして、遠赤サウナなどの「熱ストレス」で加温するのが熱ショックタンパク質を最も多く増加させることがわかりました。ヒトの場合、熱ショックタンパク質は加温してから二日後にピークになるように増加する。
  • 予備加温してストレスから防衛

~ですから、事前に加温して熱ショックタンパク質をたくさん増やしておけば、大きなストレスが来ても細胞が傷害を受けたり死んだりするのを防ぐことができるのです。


手術前に加温して回復を早める

 これを実際に応用してみましょう。たとえば、手術を受ける日が決まった場合、手術日の二日前にあらかじめ遠赤サウナで加温しておけば、手術日に熱ショックタンパク質の産生がピークになるので、手術によるストレスを抑え、回復を早めることができるわけです。
手術後は、手術という非常に大きなストレスによって免疫が低下するのでがんが再発しやすくなります。そうした免疫低下を防いで予防に役立てることができます。

 

 

熱ショックタンパク質は放射線傷害を軽減 

 また、熱ショックタンパク質は放射線傷害を軽減します。わたしの入院中、放射線治療はがん研病院に行って受けていましたが、患者さんたちは治療から帰ってくると、副作用がでないようにするため病院に設置してあった遠赤サウナにはいりました。
ふつう放射線を当てた場所は日焼けしたようになったりしますが、遠赤外線の働きで細胞障害を予防でき、皮膚に異常が現れませんでした。がん研の医師は、放射線治療を受けても、一心病院からくる患者はどうして副作用が出ないのかと不思議がっていました。
今、熱ショックタンパク質のことが分ってみると、本来なら治療に行く二日前に遠赤サウナに入いったほうがもっと良かったわけです。それから、治療後にまた入れば、もっと効果的だったのです。

 
体を温めるとマクロファージの能力(感染した細菌やウイルスを攻撃する力)が高まる。

加温により生成される熱ショックタンパク質はナチュラルキラー(NK)細胞の活性を高め、抗原提示能も増強するので、免疫力が上がります。加温して熱ショックタンパク質が増えてがん細胞だと認識しやすくするので、NK細胞ががん細胞を攻撃しやすくなるのです。


(『HSPが病気を必ず治す』愛知医科大学 伊藤要子助教授 ビジネス社 2005年)